日々の記事

 大学教員として考えていることを少しずつ、記事としてまとめておきます。
(取り上げている本については、大学図書館にある場合、必ずリンクをしてあるので、ご利用下さい。無い場合は、Amazonへのリンクがしてあります。また、記事に関わるリンク先も記事の最後に記してあります。)

2015年8月6日(新科目『公共』に思うこと)

購入可能なすべての新聞を購入し、読んでいる最中です。
研究室のWEBページを見て頂いている方はご存じかもしれませんが…下記の様な報道がマスコミ各社で報じられています。(日経だけがなぜか3面ですけど…)

新聞タイトル

朝日新聞『高校新科目に「公共」
      22年度 近現代史も必修』(2015年8月6日 朝刊1面)
産経新聞『中教審答申素案 指導要領 高校で全面改定
      新科目 日本・世界史を融合』(2015年8月6日 朝刊1面)

東京新聞『高校 新必修に近現代史 模擬選挙など「公共」必修化
      指導要領 骨格案』(2015年8月6日 朝刊1面)
毎日新聞『新指導要領案 高校「歴史総合」必修
      18歳選挙権受け「公共」も』(2015年8月6日 朝刊1面)
日本経済新聞『高校で近現代史必修 文科省、時期指導要領で骨格案』
                   (2015年8月6日 朝刊3面)
読売新聞『新指導要領案 高校近現代史必修に
      新科目 選挙教育で「公共」』(2015年8月6日 朝刊1面)

 学習指導要領は、児童・生徒が学ぶ学習内容の基準などを文部科学省が定めるもので、約10年ごとに改訂されています。教科書などはこれの基づき作成されることになっており、現場への影響も大きいものがあります。今回は改訂に向けて、文部科学省が中央教育審議会の特別部会に示された骨格案(素案)が報道されました。前回の改訂では、小中学校では学習内容を増やすことをしたのに対して、高等学校はほぼ手つかずだったと指摘(産経新聞記事より)。そのため、骨格案においては、新しい科目についても言及しており、社会科に関係する所で言えば、地歴の日本史・世界史融合科目(歴史総合)、地理の新科目(地理総合)と公民科で新科目「公共(仮称)」の新設・再編が検討されることになるそうです。以前より、自民党を中心に「公共」という科目について報道されていましたが、文科省の案もそれをうけて動いているみたいです。

 詳細な分析はこれからになるでしょうが、公民科・地歴科にとっては必修科目の問題を含めて、科目の新設を含めて大きな改革になることは明らかです。各新聞社は改訂問題についてニュートラルな報じ方をしていると思いますが、これから検討される内容によっては、現場からも声をあげていく必要があると思います。(新聞報道でされている「模擬選挙」やら「模擬裁判」、「インターンシップ」など…もろもろを全部、新科目に入れ込もうとしているところが少々怖い感じがあります。なんでも出来ると思われることが一番危険です。)

 社会科はご存じの通り戦後にできた教科ですが、高等学校の社会科が無くなって約20年ちかく。科目の新設という意味では、A科目やB科目といった区分の話を除けば、科目「現代社会」の新設以降、はじめてのことになる。ある意味では社会科に期待が集まっていると考えることも出来ますが、政治問題化している感も無いわけではない。そのあたりを含めてこれからも注目していく必要があると思います。

 今日は、新聞記事を比較して、どのような事が書いてあるのかを見ていきたいと思います。帝京の学生さんはぜひ、意見を聞かせて欲しいと思います。

2015年8月5日(雑感)

 何日か記事の更新をしていませんでした。

 その間、大学の定期テストがあり、模擬裁判選手権があり、研修があり…と、そこそこ忙しかった訳です。ファイスブックではちょこちょこ記事を書いてはいるのですが…

 さて、最近、面白いことは何件かあったのですが、一番興味をもった話を。(まあ、与太話はFacebookで…)

 帝京大学にはLMSというシステムが作られています。ラーニング・マネジメント・システムの頭文字をとっているものですが、ネット上に宿題・課題・小テスト・反転学習用の教材などが置けるシステムです。たぶん、結構な費用がかかっているのではないかと思っていますが、帝京大学のすべてのキャンパスで利用可能だそうです。以前からこのシステムに興味をもっていたので、先日、大学の研修会に参加してきました。結論から言うと、反転学習を考える上でも、これは面白いかもしれない。

 アクティブラーニングが求められるなかで、授業でしか出来ないことはなにか?逆に授業外でできることとは何かを考えないと行けません。一例を言えば、小テストのようなものはLMS上に出した方がよいものでしょう。また、知識を教授するスタイルのものは、反転学習としてLMSに出すこともできます。逆に、授業では、議論(ディスカッション)やロールプレイ、模擬授業などを行うことがこれまで以上に求められると思いました。夏休み中にシステムについて勉強を深めて、自分なりに使い方を研究したいと思います。

2015年7月27日(高校生模擬裁判選手権の案内)

 下記の日程で高校生模擬裁判選手権・関東大会が行われます。昨年は、前任校も出場させてもらった大会です。個人的には、大会参加前からよく知っている行事で、これまでは湘南白百合学園が8連覇していた大会でした。しかし、今回は地区予選で湘南白百合がまさかの敗退。また、前任校は抽選でもれるという展開…(ちなみに、前任校は昨年の準優勝校です。)いやいや、なかなか波乱がおきそうな関東大会の予感です。

 ということで、下記日程で行われますので、ぜひ、高校生の活躍をご覧頂けたらと思います。法教育としても面白い取り組みだと思います。

 日時:2015年8月1日(土)
  9時40分開会式
  10時30分~12時20分  第1試合
  13時20分~15時10分  第2試合
  15時40分~16時30分  閉会式[成績発表・表彰]

 場所:【関東大会・東京】
  弁護士会館2階講堂「クレオ」及び東京地方裁判所
  住所:〒100-0013 東京都千代田区霞が関1-1-3(地図
  地下鉄 霞ヶ関駅(B1-b出口)から直結

 日弁連ポスター

 昨年の模擬裁判選手権では、生徒たちが自分たちで議論を組み立てて、よく頑張ってくれました。

2015年7月26日(元同僚の先生がテレビに出演しました!)

 岐阜で勤務していた時の同僚の先生がバラエティー番組に出演…。なんでやねん?と思っていました。放送を見たくても、残念ながら地方局の番組なので、東京では放送されないからと思っていたら番組WEBページ上で見る事ができることがわかりました。その番組です。

 

 番組のWEBページはこちら

 アユのリュックを商品化したいという高校生の話なんですが、もう実際に販売レベルまで行っています。(販売サイトはこちら。)

 かつて大学院の先生の一人が、社会とつながる学校教育という研究をされていて、当時そのような話を聞いて、なかなか難しいなと内心…思ってました。しかし、実際には企業とコラボして鞄を製作し、販売するということをしているのをみて、地域活性化だけでなく、学校教育的にも新しい実践例になる可能性があると感じました。

 テレビでは温和にみえそうな先生ですが、工業高校時代には怖い先生として知られてました(笑)お時間があるときに、新しい教育の姿としてもご覧頂けたらと思います。

2015年7月24日(NHKで昔話法廷が放送されます)

 この夏にEテレ(NHK教育)で、法教育&昔話がコラボしたお話しが放送されます。私たちが筑波大学大学院に在籍していたときにも、昔話「鶴の恩返し」で法教育を行ったことがあり、昔話で法教育は、なじみ深い話題ですね。指導教官の江口先生も、昔話は法教育に使えると言っていたことを思い出します。放送日などが決まったそうなので、ぜひご覧になってください。

 前任校(東京学芸大学附属高等学校)もこの番組製作に少しだけ関わっていて、実は国語科の授業のなかで、放送用シナリオを用いた話し合い授業が行われました。(ご協力ありがとうございました。)

 この番組の特徴を言うと、シナリオを見た後の評議はクラスや家庭で行うことを想定しています。1話15分という長さは授業で見る事を想定していて、授業後に話し合うことも出来るサイズと言えます。シナリオには法にかかわる葛藤が含まれており、中学生や高校生が議論するのには丁度良いと思います。帝京大学でも「3匹の子豚裁判」をやったことがありますが、学生の感想は上々で、先日の授業アンケートでも教員になったら模擬裁判をやってみたいという声が多くありました。三話も話がつくられたので、来年はこの番組をもちいて授業をするのも考えたいと思います。

「三匹のこぶた」

  8月10日(月)午前10:00~10:15 Eテレ
  8月21日(金)午後11:25~11:40 Eテレ

「カチカチ山」

  8月11日(火)午前10:00~10:15 Eテレ
  8月21日(金)午後11:40~11:55 Eテレ

「白雪姫」

  8月12日(水)午前10:00~10:15 Eテレ
  8月28日(金)午後11:30~11:45 Eテレ

【参考リンク】

 監修の先生の紹介ページ

2015年7月16日(契約社会を生きる)

今年の科目に『契約社会を生きる』という科目があります。何やってるかというと、私法関係の基礎的な事項を学ぶもので、民法の総則や契約関係、不法行為の話や労働法などなどを学ぶ科目です。かつて可児工業高校の時にやっていた学校設定科目『法と社会Ⅱ』の内容に近い部分があり、法教育的な面からも今年は楽しく授業をやらせてもらいました。

さて、昨日は『利息制限法』に関わる話をしてました。利息制限法第1条では以下の様に定められています。(年○○%は加納が加筆)

 一  元本の額が十万円未満の場合 年二割(年20%)
 二  元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分(年18%)
 三  元本の額が百万円以上の場合 年一割五分(年15%)

さて、これを説明しながら、かつてのグレーゾーン金利の話を…と思ったら、教室から学生のつぶやきが…

「家買ったら、年15%か〜。大変だなあ〜」

…。「おい、まてまて。家のローンが15%ってどんな経済感覚だよ(笑)」と僕が指摘し、教室は大爆笑。そこからは住宅ローンの金利を含めた経済の話に…。(3000万円を年利15%でかりたら、年いくら払うの?払えないでしょ!みたいな話で、クラス中が爆笑。つぶやいた学生も「あー」って感じに…)

教室は間違える所だからいいんだよ。と言いながら、これは経済感覚の問題かな…とも思いました。結構、社会科の授業って生活感が大事だったりするので、今回の授業では面白い体験ができました。たしかに、金利ってそこまで意識しないけど、社会科的には扱う問題だなとも思い…今日の記事にしておきたいと思いました。来年は、平均の金利はこんなもんだよと説明してから利息制限法の話をしたいと思いました。

【参考】

 利息制限法

 住宅ローンの金利 (三井住友銀行ページ)

2015年7月14日(少年法と児童虐待)

今年の科目に『少年法と児童虐待』(正式名称はもっと長いのだけど、ここでは省略して)というものがあります。1名を除きすべて女性のクラスで、少人数の和気藹々と授業が進んでいます。

あと2回で授業がおわるので、まとめに入ってきました。今日は『少年犯罪』と『児童虐待』班に分かれて、これから社会で取り組んでいくべき課題を、原因・分析・対策に分けて検討を行いました。

赤い付箋・黄色い付箋・青い付箋を使って、自分たちの考えをまとめる作業をしました。次回は、彼らの考えた対策についてクラス全体で話し合いをする予定です。よく頑張ってくれています。次回の発表が楽しみです!

2015年7月11日(土曜日の大学)

 

 昨日は附属高校で『貿易ゲーム』をやらせてもらい、本日は大学の研究室に籠もっています。今日、大学にやってきたら、明日のオープンキャンパスの準備が行われていました。大学側も高校生に大学のイメージをもってもらう必要があり、オープンキャンパスには力を入れています。明日にどれだけの受験生が来てくれるのでしょうか?来年の新入生は、新しい建物でも授業を受けることになりますね。

 で…、昨日は記事の更新をサボりました。昨日、附属高校の授業の際に、ビデオもっていきました。撮影しようと思ったのですが、人手もたらず断念。ただ、もっていたビデオの三脚。珍しがられました。実は、実習生の授業を撮影するために買った物。大きな三脚を最初もっていったのですが、三脚って威圧感がある…。授業をみてい目線で撮影できないかと考えて購入したのが、以下のもの。

小さいのでもっていくのも楽だと思います。これから反転授業などの実践に使えたらと思っています。とりあえず、三脚のご紹介まで。

【リンク】(購入できますよ)
  Manfrotto ミニ三脚 PIXI ブラック MTPIXI-B

2015年7月9日(小学校の図書館授業を見てきました)

 本日、東京学芸大学附属世田谷小学校の授業を見学してきました。前任校では司書教諭をさせてもらっていた関係で、今日集まっていた学大司書部会の先生方はほとんど顔みしり。ということで、ある部分で気軽な感じで参加させてもらいましたが、得るところが多かったです。

 いいなあと思った点を何点か書いておきたいと思います。まず、図書館が使われていて、児童と司書、先生との協力が見えていたところ。何時も附属小学校へ行くときには、子供がいない時間帯に行っていたので、今日、目の前に子供がいて、楽しそうに授業をしていたのを拝見できたのは、本当に勉強になりました。

 あと、子供たちを動かす方法として、何種類かネタを紹介していただきました。たとえば、1つが、児童が帯をつくってその本を紹介するというもの。誰かのために本の紹介をするって言われれば、やる気も起きてくるということで、何冊か拝見しましたが、なかなかの出来。ぼろぼろになってるのは、一緒に貸し出しているからだそうです。

 あと、世田谷小学校の特色の1つが読書ノートです。授業前に目の前の児童にノートについて話しかけたら、去年は150冊読んだとのこと。「すごいねえ〜」って声をかけたら、「○○ちゃんは、200冊なんだよ」って…。いやいや。これで小学3年生なんだから末が恐ろしい…
(彼には将来、附属高校に来て欲しいですね(笑))

 図書館授業はちょっとしたアイディアとか、工夫で、本当に児童のやる気を起こすんだなあと感心しました。ぜひ大学生も、こういう良い授業を見て欲しいとおもいました。

 なんか、最近、小学校の事ばかり書いている…。
 そろそろ、中高の授業は…!って話を書きたいと思います。

【参考リンク】(今日の関連するWEBページ)

 『授業に役立つ学校図書館活用データベース
    (学芸大学で作っている図書館データベース)
 ・東京学芸大学附属世田谷小学校WEBページ
    (今回の授業を行っていただいた学校)
 ・東京学芸大学付属世田谷小学校の夏の研修
    (ぜひ、お越しくださいと言われました。皆さんどうぞ!)

2015年7月8日(小学校の授業のあり方)

 いま、専門分野外ですが小学校の教科書を読んでいます。そして、小学校版の実況中継を手に入れたので、そちら一緒に読んでます。

 実況中継の方は、中学の受験勉強だからあまり面白くないのかなと思っていたら、これが面白い。小学生に理解できるように、様々な分野の話を盛り込みながら説明をしています。時に、都会っ子には生活感のない話(農業の事)をしているのですが、講師の先生はイラストや地図をかいて理解させています。(なぜ、連作障害が起きないかという話などは、感心しました。僕なんかは高校の地理で連作障害の話をしていたのに、小学生に教えているって…)

 ちなみにイラストはこんな感じ。

               (佐藤(2004)p41より)

 やるなあ〜って、思いませんか?この場面は棚田の説明。『田毎(たごと)の月』を説明しながら、棚田は…という説明を加えています。
 社会科の教員をやっていると感覚的に分かるのが、情報量が少ないから暗記しやすいかというと違うということ。情報を有機的に与えながら、つかみ取らせたい概念とかを提示することをしていると思います。(※心理学的な意味では、西林(1994)を参照の事)

 そこでふと思うのが、小学校の教科書。教科書の厚さが薄いのは仕方がないとしても、授業者である教師自身が一定程度の知識を持たないと、あの少ない文章で説明することは困難になります。学生にはいつも話している話になりますが『行間にある知識をどうやって説明しながら、本文で語りたい内容を理解させるのか?』どうやったら、子供たちは理解が深まるのか?悩ましいところです。

 たぶん、小学校の教員の先生からは、そんなことではないよとお叱りをうけると思いますが、最低限の知識はいるかなと思いました。そんなこんなで、一冊しかなかった小学校版・実況中継をAmazonで注文したところです。

【出典】

 西林克彦(1994)『間違いだらけの学習論 なぜ勉強が身につかないか』新曜社

 佐藤清助(2004)『中学入試 社会授業の実況中継① 日本の国土と産業』語学春秋社

2015年7月7日(附高版・平和構築をつくる)

 今週、前任校において平和構築にかかわる特別講座の講師をさせてもらう予定だ。平和構築は新しい概念なので、聞き慣れない言葉かもしれない。英語で書くと、peacebuildingだから、平和を作るとでも言うのだろうか。平和構築はここ20年近くで出てきた概念で、国連などでも用いられる考え方である。今回、附属高校では外部講師を含め10回近く、講座を開く予定である。今回の私のテーマは、『貿易ゲームで世界経済を理解する』というもの。貿易ゲームは中学でも行われているが、なぜ南北問題が無くならないのかをゲームを通じて、ディスカッションさせたいと思っている。また、機会があれば報告もしたい。

 平和構築は、いろいろな学問分野の学びが必要であり、1つだけで解決できる問題ではない。第一回目の特別講師で来ていただいた東京外国語大学の篠田先生はこの分野の第一人者でもあり、生徒たちは大いに講義をうけて刺激をうけた。このほか、模擬国連の開催や国境なき医師団の方の話などを企画している。平和構築って幅が広いなとつくづく思う。以下に、今思っている平和構築と他の学問の関連の図を表した。

 図 平和構築を実現するために…(加納作成の図)

 

 彼らに役立つのだろうかと思いながら、上の本などを参考にして、授業を組み立てている。

 そういえば、先日、図書館で発見した法学セミナーに知っている先生が論文を書かれていました。元筑波大学附属駒場中高の教諭で、現在は大正大学の吉田先生が、ヘイトスピーチの問題と人権教育の課題について論じています。
 ヘイトスピーチの問題は、国内における平和構築につながるのではないか?勝手にそのように解釈しながら、僕もどんな授業ができるのだろうかと考えながら、読ませていただきました。

【出典】(帝京大学図書館へリンクしてあります)

 大塚啓二郎『なぜ貧しい国はなくならないのか』日経新聞出版社、2014年
 『法学セミナー』 726号(2015年7月号) 日本評論社

2015年7月6日(小中高そして大学教育へ)

 今日は全学のFD委員会に参加してきました。FDとは「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取組の総称」であり、学部の分掌の1つにFD委員会があります。加納は学部FD委員になっています。FDでは、教員同士の授業参観や学生による授業評価などが有名ですが、考えてみるに初等・中等教育の方が、進んでいる分野かもしれません。
 しかしながら、FDも大学の教育だけに着目するのではなく、小学校・中学校・高等学校という流れの中から、大学の講義を考え直していく必要があるのだと思います。社会科教育という観点で言えば…

 図 初等教育から高等教育へ 社会科系科目の流れ(加納作成)

 という科目群があり、生徒(学生)は切れ目無く教育を受けていることになります。教育学的な観点からすれば、どのような学びをしているかを知ることは重要なことだと思います。
 ということで…、一番上の写真にあるように小中高の教科書を買ったので、読み込みたいと思います。これで、学生さんと議論ができる。嬉しいなあ〜。

【参考】

 帝京大学高等教育開発センター

 文部科学省 「FDの定義」

2015年7月5日(今日考えたこと 〜社会科教育学で出来ること〜)

 

 大学院では社会科教育学という学問を学んだ。それらしいことができたかどうかは不明だが、その後、国立大学附属に勤務して、教員養成のあり方とは?みたいなことも少し考えた。問題は教員養成において社会科教育学はどんな役に立つのかという事である。社会科教育学は、教員免許法上の教職科目として教科に関わる科目があるのだから…という建前論は言えるが、学生にとって直接的に役立つことは何だろうかと考える。

 振り返ってみると、たしかに自分自身が大学で勉強した社会科教育法の記憶は、ほとんど無い。授業で学習指導要領を読んだ記憶はあるし(なぜか暗記させられた…)、学習指導案を書いたことは覚えている(でも、個別の指導はなかった)が、役立つ話だったかというと…受講生が多かったこともあって、記憶がほとんどない。

 それは何故だろうか?それは、大学の授業と現場レベルとの乖離が少なからず存在しているからなのかもしれない。最近、それは学会レベルでも問題になっている。たぶん、大学での社会科教育学とは…という、あるべき論が存在しているのも事実だと思う。しかし、一方で教壇に立つときに困っている学生をみると、少しは役に立つ学問にならないといけないと思う。

 筑波で学んだ事は?と聞かれると、大学院では『社会科の授業のあり方』を考える授業が多く、よい授業とは何か?とか社会科において暗記はダメなのか?といった、根本的で本質的な問いから、学生同士・教員との議論を通じて考える訓練ができた。大学院で指導を頂いた井田先生の著書(2005)には、日頃、考えて事の解決策になるヒントが多く掲載されていた。最近は、筑波で学んだ方法をどこまで学部レベルでの授業に役立たせることが出来るかを考えている。

 そこで、最近考えているのが、すこしでも内容面と方法面を繋げる授業改善をしたいと考えています。井田(2005)にある「多人数クラスの討論の進め方」をしたいとおもっています。(詳しくはp253参照の事。下の図も参照ください)

 図1 多人数討論進め方(井田(2005)を簡略化したもの)

 

 1度、大学の学部での講義に参加させて頂いたことがあるのですが、この討論は直ぐに出来る方法です。クラスで隣同士で座っている学生に役割を与え、それに関する討論を行わせるのです。例えば…歴史教科書問題について…

 A側に座っている学生  歴史教科書を直すべき派
 B側に座っている学生  歴史教科書は現行のままでいくべき派

 などと分けて、話し合いをさせるものです。大教室の授業でしたが、役割を与えられると、隣の席の学生のためにも勉強をせざるをえず、説明をすることにより、理解を深めることが出来てました。

 小中高でアクティブラーニングが大切と言われている中で、授業のイメージをもてる者が少ない。もっというと、討論・話し合いのイメージは少ない。参加型の学習でよく根拠にされるPAYNE(2000)の「cone of experience」じゃないが、生徒にロールプレイやワークショップ、実際に体験することなどをさせるためには、授業者になる学生に参加型学習を体験させる必要があるのだと思う。

【出典】
井田仁康(2005)『社会科教育と地域 〜基礎・基本の理論と実践〜』NSK出版 
(amazonでは取扱いがないようですが、出版社に問い合わせると本はあるみたいです。)

David A. Payne(2000) Evaluating Service-Learning Activities and Programs